当院では全国に先駆けて2021年6月に新型コロナウイルス心臓後遺症専門外来を開設しました。
新型コロナウイルスに感染し、快復した後も動悸や息切れ、胸痛(胸が重苦しい、痛い、圧迫感がある)などの症状が続いている方を対象に、心エコー検査や造影 CT 検査などを活用して、ウイルス感染後の心臓後遺症や狭心症・弁膜症などの有無についてスクリーニングを行い症状の原因を詳しく調べてきました。
これまでに札幌市内をはじめ、北海道内各地や他県の方にもご来院いただき、140名以上の方の診察を行いました。遠方の方には、本来であれば数回受診して検査や診察をするところを可能な限り負担軽減になるように来院回数、入院日数を調整しました。
受診者の平均年齢は約41才で年代別でみると30代が多い結果となりました。
受診者全体を見ますと会社で働いている方が約9割を占めており、なかには休職中で労災申請や傷病手当の申請ができずに悩まれている方もおりました。
当院では保険会社や会社へ提出をするために診断書をご希望の方には、検査結果等を踏まえて医師の判断で作成しております。
また、受診していただいた中で約3割の方に心膜炎や狭心症などがみつかりました。心臓にかかわる病気だけでなく、検査を行っていくなかで甲状腺などの病気をみつけることも多く、その場合は適切な医療機関を紹介しております。
診察をご希望の方は以下の新型コロナウイルス心臓後遺症専門外来ページの予約専用フォームもしくはお電話にて医療相談室宛までお申し込みください。
厚生労働省が2021年12月に公表したコロナ罹患後症状(後遺症)のマネジメントに関する手引きには、かかりつけ医が身体診察や心電図、血液検査などからコロナ関連の心臓後遺症を疑った場合に、循環器専門医を紹介するというフローチャートが掲載されています。
しかし、紹介された循環器専門医がコロナ関連の後遺症についてどのようにして診療したら良いかについては具体的に記載されておらず、その指針は定まっていないのが現状です。
当院では専門外来開設当初から心臓CT検査や心エコー検査、関連施設での心臓MRI検査など画像診断を積極的に活用した診療を行ってきました。特に心臓CT検査は撮像時間が短く,心臓MRI検査と同様に造影剤を併用することで心臓後遺症(心筋障害)を検出でき,さらに合併する狭心症や肺炎、全身の血栓症なども一度に評価できます。コロナに関連して生じる心臓後遺症(心筋炎や心膜炎など)、コロナが原因で悪化する狭心症や弁膜症を見逃さずに診断・治療するには、詳細な問診とこれらの画像診断を駆使する必要があります。
心膜炎が見つかった場合には、まず3か月程度の薬物治療(非ステロイド抗炎症薬、コルヒチン)を行います。狭心症や弁膜症が見つかった場合には、薬物治療に加えてカテーテル治療や手術治療が必要かどうかを検討します。心筋炎による心臓後遺症が見つかった場合には薬物治療と慎重な経過観察が必要になります。また甲状腺機能異常や女性特有の病気による貧血など、心臓以外に後遺症の原因が見つかることもあるため、その場合には適切な医療機関を紹介し、治療をお願いしています。
このような画像診断を活用したコロナ後遺症診療はオンライン診療では行うことができません。コロナ後遺症として胸痛や息切れでお困りの患者さんは、一度当院へご相談ください。