カテーテルアブレーション(心筋焼灼術/Ablation)は、不整脈の治療法の一つで、心臓の中に電極付きの細長く柔らかいカテーテルを挿入し、不整脈の原因となる心筋細胞を焼灼する治療法です。
カテーテルアブレーションの優れた点は、薬剤による治療とは異なり、多くの頻脈性不整脈の根治が可能なことです。心臓の立体画像をコンピュータ画面に映し出し、心臓内の形態と不整脈の発生状況を見ることができる三次元マッピング装置を併用することにより、治療に要する時間が短縮することができ、より安全に治療を行えるようになっております。
主に心房細動、心房粗動、発作性上室頻拍、期外収縮、心室頻拍などが対象となります。
正常な心臓は、安静時で規則的に1分間60~80回拍動しています。心房細動は、心房といわれる心臓の上の部屋が不規則な心筋収縮が1分間に300回以上、心房粗動は、規則的な心筋収縮が1分間に240回以上起きる不整脈です。
動悸やめまい、脱力感、胸の不快感などを覚えることもありますが、自覚症状がない方もいらっしゃいます。心房内に血液のかたまり(血栓)ができやすくなり、血栓が心臓から流れ出て脳や全身の動脈を塞ぐと脳梗塞や血栓塞栓症を引き起こすことがあります。
発作的に脈がはやくなり、しばらく続いたあとに突然停止する不整脈です。発作性上室性頻拍には、房室結節回帰性頻拍、房室回帰性頻拍、心房頻拍と呼ばれる3種類があります。発作性上室性頻拍の症状は、主に動悸やめまい、ふらつきを覚えることがあります。
正常な拍動の間に時々不規則な拍動としてあらわれる不整脈で最も頻度が高い不整脈です。期外収縮は、自覚症状のない場合が多いですが、症状を感じる場合は、脈が飛んだり、胸の不快感を覚えることがあります。
心室といわれる心臓の下の部屋が1分間に120回以上収縮する不整脈です。
当院では、最新のEnSiteシステム(三次元マッピングシステム)を導入しており、心電図を記録するシステム(EP Workmate:アボットジャパン社製)と連動させることにより、治療をより安全に行うことが可能となっております。また、X線透視時間も大幅に短縮でき、被ばく低減に貢献しています。
当院のカテーテルアブレーション専任医師である、さっぽろ不整脈クリニック院長 櫻井聖一郎先生と当院の認定心電検査技師や不整脈関連専門臨床工学技士など資格を有した職員や看護師、診療放射線技師から成るチームで治療を行っております。
アボットメディカルジャパンの協力のもとに実施しているアブレーション見学会では、全国から多くの医師や臨床工学技士が見学に訪れ、当院の治療技術やシステムに関するレクチャーを受けております。
治療をより安全に行うための最先端のシステム
PMI(ペースメーカー植え込み術/PacemakerImplantation)は、心臓の拍動を正常の回数に保つ役割をもつ医療機器ペースメーカーとリードと呼ばれる電線を鎖骨より下方の皮下に植え込む治療法です。ペースメーカーは、患者さんの心臓の状態に合わせて、心臓に電気刺激を送り、心臓を拍動させます。 |
提供:日本メドトロニック
また、カプセル型でリードがないタイプのリードレスペースメーカーは、心臓に直接留置させるため、治療のための時間が短縮し、治療による傷が残らないなどの利点があります。 |
提供:日本メドトロニック
ICD(植え込み型除細動器/Implantable Cardioverter Defibrillator)は、心臓の拍動を正常の回数に保つ役割をもつ医療機器ICDとリードと呼ばれる電線を鎖骨より下方の皮下に植え込む治療法です。 ペースメーカーが徐脈に対する治療を行うのに対し、ICDは心室頻拍、心室細動という致死的な不整脈に対する治療を行います。 |
CRT(心臓再同期療法/Cardiac ResynchronizationTherapy)は、2本のリードを心室側に留置し、血液を送り出す役割をもつ左心室を挟み込む形で刺激することで血液を効率よく送り出せるようにします。患者さんの症状に合わせて、CRTとICDの機能の併せ持つCRT-D(両室ペーシング機能付き植込み型除細動器)と呼ばれる医療機器を使用することもあります。 |
心臓が拍動するためのペースメーカーの役割をする洞結節が機能不全を起し、心拍数が減少する不整脈です。めまい・失神・息切れ・疲れやすいなどの症状がでます。
心房全体から電気信号が不規則に発生し、それが心室に伝わるために脈が不正になります。その時、電気信号を心房から心室へ中継する房室結節に機能不全があると電気が伝わり難くなり脈が少なくなってめまいや失神が起きます。
房室結節の機能不全によって、心拍数が減少する不整脈です。めまい・失神・息切れ・疲れやすいなどの症状がでます。
心室といわれる心臓の下の部屋が1分間に120回以上収縮する不整脈です。
心室が痙攣(けいれん)を起こしたように収縮し、全身に有効に血液を供給できなくなる不整脈です。心室細動が起きると、数秒で意識がなくなり、直ちに心室を規則正しい拍動に戻さなければ死に至ります。
心臓のポンプ機能の低下が極めて高度になり、肝臓や腎臓、脳などに必要な酸素を供給できなくなり、これらの臓器の機能が障害され、命に関わる危篤的な状態をいいます。
この度、当院は体内に植え込まれた心臓ペースメーカーを患者さんが受診しなくても病院で確認できるシステム(以下、遠隔管理システム)を導入しました。遠隔管理システムとは体内に植え込まれたペースメーカーの情報(電池の残量やリード線の抵抗値、危険な不整脈の発生など)をご自宅から専用の送信機を通じて、病院の情報管理システムへ送信することにより、医師や臨床工学技士が確認できるシステムです。
従来の心臓ペースメーカーの管理は3ヶ月に一度、定期受診時に行っていましたので、ペースメーカーの機能異常や不整脈が発生していても受診後の3ヶ月間は確認できませんでした。
しかし、遠隔管理システムでは、機器の異常や不整脈の発生は、即日に通知されるために患者さんへの対応が迅速に行えるようになりました。したがって、定期受診で来院する回数は1年に一度でよくなり、来院する患者さんの負担が大きく減りました。
当院で採用している心臓ペースメーカーの製造元は4社あり、2022年1月よりキャノンメディカルシステムズ社の一元管理システムを導入することによって4社の情報を一覧で確認をすることが可能となり患者さんの情報を遠隔管理することが可能となりました。
当院が行っている一元管理システムを利用遠隔管理システム
※送信機画像提供:日本メドトロニック株式会社
当院ではペースメーカーや植え込み型除細動器、両心室ペーシング機能付き植え込み型除細動器等の植え込み手術を直近5年間では415件行っておりますが、最近は遠隔管理システムを利用する患者さんが増えています。
心臓ペースメーカーの製造元4社が独自に規定した時間内で収集した情報を病院へ送信するため、当院は常時、ご自宅などに設置された送信機を通じて情報を確認しているわけではありません。したがって救急対応はできないため、いつもと違う症状を自覚された場合は当院へ直接ご連絡ください。医師や看護師などの医療スタッフが対応致します。
従来の心臓ペースメーカーのチェックは、患者さんに定期的に病院を受診していただき行なっていましたので、次のチェックまでの間にペースメーカーの機能異常や不整脈の発生を把握できないという欠点がありました。 しかし、最近の心臓ペースメーカーは"遠隔管理"という機能を有しており、患者さんのペースメーカーから送られてくる情報を病院で確認できるようになりました。そのため、比較的早期に、患者さんが自覚していなかった不整脈を見つけることが出来るなどの対応が可能となりました。したがってこの遠隔管理システムは、ペースメーカーの機能異常や不整脈の早期発見と治療、心不全の予防など患者さんの予後改善に有効であると認められております。 また、札幌市外に在住の患者さんにも可能なシステムですので、遠方でも利用可能となっており、利用患者さんからは『安心感がある』との感想を頂いています。 心臓血管内治療センター 心構造疾患部門 部長 不整脈部門 部長 不整脈部門デバイス科 科長 古堅 真 |
心構造疾患(SHD:Structural Heart Disease)とは、弁膜症、心筋症、その他先天性の心臓病など、心臓の構造異常が原因の病気のことをいいます。
リードを使用するペースメーカーでは、右心房から右心室への刺激伝導系において障害を起こした部位を電気的にバイパスすることで治療することができるのです。リードを留置する位置によって心臓の機能をより発揮させることができます。平均的な治療の時間は30~60分です。
当院では、適応のある患者さんに対して、リードレスペースメーカーを積極的に選択しています。2018年2月から2019年1月まで38名の方々に植え込みを行い、とくに合併症はありませんでした。治療中に心臓の形態や状況を見ることができるマッピングシステムを利用して、術者の習熟度を高めることにより、安全な治療を提供しております。平均的な治療の時間は10~15分です。
提供:日本メドトロニック
患者さんの症状に合わせて、ICD(植込み型除細動器)、CRT(心臓再同期療法)に加え、ICDとCRTの機能の併せ持つCRT-D(両室ペーシング機能付き植込み型除細動器)を用いた治療も積極的に取り組んでおります。
ペースメーカーに比べて大型になるため、体内への植え込みには感染症が発症する可能性がありますが、最新の医療機器を使用し、治療時間を短縮し、リスクを軽減しております。
また、治療後の管理も安全のために行っております。平均的な治療の時間は、ICDで30~60分、CRTで90~180分です。
PMI・ICD・CRTの治療は、循環器内科の医師と看護師、診療放射線技師、臨床工学技士から成るチームで治療しております。
- 当解析センターの特徴は、循環器専門病院の特性を活かした迅速で精度の高いデータを提供することです。
- ホルター心電図波形を当院の専門の臨床検査技師が解析し、専門医による判読、さらに治療に関する的確なアドバイスを添えた報告書をお届け致します。
- 結果はカードが届いてから4日以内に郵送します。
- 至急解析が必要なデータに関しては、カードが届いた当日に結果をFAXで送り、後日正式な結果を郵送します
- 解析中に危険な所見が発見された時は、正式な報告書の完成を待たずに、ご依頼元にFAXや電話で大至急お知らせします。
- ホルター解析センター長は、臨床検査技師と臨床工学技士の国家資格を取得しており、心電図、カテーテルアブレーションおよびペースメーカの知識にも精通した技師です。この知識を活かし、さらに臨床検査技師と医師と連携を図り、質の高い解析を行っています。
- 判読は専門医により行っており薬効判定、他の精密検査および各種治療に関する的確なアドバイスを添えた報告書をお届けします。
- 当院よりご依頼元に解析依頼票一式をお送り致します。
- 記録媒体(ICカードなど)と行動記録表に依頼票を添付し、当解析センターへご提出ください。
- 解析結果報告書に、圧縮波形、専門医による判読コメント、行動記録表と解析済みの記録媒体(ICカードなど)を添えてお返しします。
- 電極装着面の皮膚は必ず清拭して下さい。
- しわができないように電極を貼り付けて下さい。
- 電極・リード線は、補助テープでしっかりと固定して下さい。
- 電池、電極は1人1回の使用をお願い致します。
- 記録開始後しばらくは、波形をモニターして極性・記録状況を確認して下さい。
- 記録中は電気毛布の使用を避けて下さい。
- ホルター心電計をご自身ではずして、宅配便で当院宛てに送って頂く方法。
- 当院に来院して頂く方法。
※1の場合は翌日に当院へ来院する必要はありません。
※宅配便を使用する際の費用は当院で負担します。
動悸、脈の乱れ、胸の痛みなどがある場合に、通常病院で行われる心電図は短時間のため、症状の原因となる心電図変化を捉えるとは限りません。そこで、日中活動中や夜間睡眠中も含めて1日中、心電図が記録できるホルター心電計を取り付け、心臓疾患の診断、不整脈や狭心症治療薬の効果判定に役立ちます。その他にペースメーカーの機能評価や心臓リハビリテーション・心臓病患者の生活指導などの必要資料としても活用できます。
当院で使用しているホルター心電計は、患者さんの負担を軽減するため、小型で軽量化された物を使用しています。
入浴対応型や睡眠時無呼吸の判定を同時に行うタイプの機器は、様々な機能が付いているため、若干大きくなりますが、100g~200g程度です。
入浴対応型ホルター心電計 |
睡眠時無呼吸検査の機械と装着後の画像 |