高周波カテーテルアブレーション実績

心房細動治療の実際

 心房細動は、血栓塞栓症の発症頻度を増加させ、心房収縮の欠如と不規則な心室収縮を伴うために心機能が低下し息切れや倦怠感など様々な症状が出現します。近年、装置や技術の進歩により心房細動に対するアブレーションが全国に普及していますが、当院でも行っている心房細動に対する治療の1つである肺静脈隔離術について説明します。

肺静脈隔離術

 1998年にHaissaguerreらにより心房細動の引き金となる不整脈の約90%が肺静脈から発生していると報告されました。肺静脈隔離術とは、肺静脈内に発生した不整脈を、肺静脈と左房を電気的に隔離することにより閉じ込める手技なのです(図4)。まず、鼠径部と頸部の静脈からシースという管を入れ、そこから電極カテーテルを挿入して心臓の各部位へ到達させます。左房内へは右房から心房中隔の穿刺を行い電極カテーテルを到達させます。その後は3DマッピングシステムにてCT画像との統合を行い、カテーテルナビゲーション機能を用いて左右の上下肺静脈を高周波により電気的に隔離していきます。治療に要する時間は、入室の準備や止血処置などを含めて2時間~3時間30分程度です。焼灼する部位によっては若干の痛みを伴う場合がありますので、手技中は鎮静剤を使用します。

図4:肺静脈隔離術
ポイントは焼灼部位です。左右肺静脈の上下を大きく囲い、上下同時に隔離する。これにより、心房細動の原因となる不整脈を閉じ込める。
心房細動治療に対する合併症とその予防

 肺静脈隔離術による主な合併症は、心タンポナーデ、食道関連合併症、脳梗塞、横隔神経傷害などがありますが、当院では、これら合併症を起こさないように様々な取り組みを行っています。肺静脈隔離術の手技で心タンポナーデが起こりやすいのは、心房中隔の穿刺時と通電中です。当院では心房中隔の穿刺時に心房穿孔の発生を避けるため、心腔内エコーを用いて正確に穿刺を行い、さらに穿刺中に患者さんが動かないように看護師が細心の注意を払っています。通電中は心筋内部の急激な上昇により水蒸気爆発を起こし、心筋を突き破る現象( POP現象)が起こる可能性があります。その予防のため通電中の温度および抵抗値を測定してPOP現象を引き起こさないように注意しています。食道関連合併症を予防するために、食道内に温度センサーを挿入しています(図5)。食道内の温度を測定し、食道内温度が42℃以上にならないように、40℃または41℃で通電を停止します。脳梗塞のリスクは、2008年に日本でも使用可能となった生食をカテーテル内に潅流させるイリゲーションカテーテルの登場により大幅に低下しました。

図5:カテーテルナビゲーション機能
CTによる左心房上に電極カテーテルを表示させる事が出来る。視覚的に解剖が解り、安全に手技が出来る。

【症例1】73歳 女性

 2009年から持続性心房細動のためカテーテルアブレーションを受けられた。

 アブレーション治療前はレントゲン上心拡大を認めていたが、治療後は正常化した。治療前はちょっとした運動で息切れが目立ったが、治療後は階段も全く症状なく登れるようになった。

ABL治療前  CTR 57%

ABL治療後  CTR 49%

【症例2】73歳 男性

 2010年から心房細動が持続しカテーテルアブレーションを施行した。治療前は心拡大が目立つが、治療後は正常化した。現在はスポーツクラブに元気に通っている。

ABL前  CTR 56%

ABL後  CTR 50%

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